イベント情報

<< 前のページに戻る

2014年度蔵見学会

2014年度蔵見学会イベントリポート

2014年2月22日(土)

亀齢酒造写真

広島県酒造組合では、毎年新酒の仕込み時期に広島県の蔵元を訪ねる「蔵見学会」を実施しています。今年は2月1日に藤井酒造(竹原市)をスタートに、賀茂泉酒造(東広島市)、三宅本店(呉市)、亀齢酒造(東広島市)、賀茂鶴酒造(東広島市)、榎酒造(呉市)の順で6蔵で行いました。その中から、2月22日に行われた「亀齢酒造」の見学会の様子を紹介します。

亀齢酒造の酒は、「広島では3本の指に入る」と言われるほどの辛口の酒。古くは「吉田屋の酒」として親しまれ、明治初期に"鶴は千年 亀は万年"のように長寿と永遠の繁栄の願いを込めて「亀齢」と命名されました。大正6年の全国清酒品評会では優れた醸造技術が高く評価され、日本初の名誉賞を受賞しています。

今回の見学会は女性限定で、17人が参加。まずは石井英太郎社長から酒造りについての話があり、第五号蔵を杜氏の説明を聞きながら見学。酒の試飲の後、「割烹 掬水(きくすい)」で懇親会。
社長や女将も交えて、賑やかに行われました。

亀齢酒造写真

酒造りについての話

「酒造りは新米ができて10月に蔵に入り、冬に酒を造って、春に売る。酒という字に含まれる"酉"は十二支の10番目。酒と10月は切り離せない仲なんですよ」という石井社長のお話。冒頭から「へぇ〜」「知らなかった〜」といった驚きの声が上がります。 酒の定義に始まり、日本酒の製造工程、産地による味の違い、広島の酒がおいしい理由などが紹介されました。いい酒を造る3大条件の一つである水について、「広島は軟水でミネラルが少なく、酵母菌の発酵力が和らぐために広島の酒は甘い」とのこと。

また、西条の酒がおいしい理由として、気温が大きく貢献しているとも。午後に気温が下がる西条は、酒造りに合わせて温度調整がしやすい地だそうです。「西条は午後3時をすぎると気温がぐっと下がります。冷たい風が、酵母菌が糖を食べる時に出す熱をおさえてくれます」と自然に寄り添った酒造りが紹介され、あちこちでうなずく姿が見られました。

お酒の話/配布資料/皆さん真剣!


杜氏と第五号蔵を見学

第五号蔵へ移動"清潔第一"の酒造りの現場には、靴を履きかえてキャップをかぶります。亀齢酒造の杜氏を17年務める西垣昌弘さんと蔵の中を歩きました。

最初に、酒の原料となる酒造好適米について説明。食用の米と比べて粒が大きく、旨みはありません。旨みは酒の味をつくるうえでは邪魔になるもの、雑味になるそうです。精米に精米を重ねて、「心白」という米の中心部のみを使用。精米の程度や気温などで米の吸水力が変わるため、秒単位で水から引き上げる時間を調節します。水を十分に吸わせてから蒸気で2回蒸し、麹室(こうじむろ)へと運びます。

全自動の「麹室」を見学した後、「第一酵母室」へ。床と呼ばれる板張りの上に蒸した米を広げ、麹菌をまぶして手で揉みます。それを、もろぶたと呼ばれる箱に入れて3段に重ねて寝かせ、夜中も2時間ごとにもろぶたの位置を入れ替えるそうです。「麹は酒の味を決めるもの。特に酵母作りは手が抜けません」と西垣さん。室の中には米粒一つなく、清潔、整理整頓が徹底されています。酒造りへの強い信念が感じられます。

「酒母室」から「醪(もろみ)発酵室」を見学。ズラリと並ぶもろみタンクで20〜25日、約15度で、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵を行わせます。炭酸ガスが勢いよく発生しているため、タンクのふたは常に開けた状態。温度や日数、発酵の程度は、杜氏の経験と勘で判断します。「酒は生き物。放っておいても酒はできるが、手をかけないといい酒はできない」と酒造りへの思いを語ります。

最後に、圧搾機を見学。酒と酒粕に分類され、酒はさらに濾過されて日本酒に。その後、火入れや調合などが行われ、瓶詰されて商品となります。西垣さんへの質問時間では、杜氏の仕事内容やこの仕事を始めた由来など、普段聞けない話も飛び出しました。

蔵見学写真


お楽しみの試飲タイム

お楽しみの試飲タイム見学後は、試飲の時間。
3種類の酒がラベルのない統一の容器に入れられ、味だけを頼りに好みの味を選びます。

用意されたのは、すっきり香り高い「大吟醸 創」、さっぱりとした蔵限定の「吉田屋の酒」、米の味わいが残る芳醇な「純米吟醸 綺麗」で、最も人気を集めたのは「綺麗」でした。さらに、ピンク色の生にごり酒「夢ふわり」も登場。微炭酸で低アルコール、甘酢っぱい味わいが女性に人気だそうです。

本日のお土産は、おちょこに入ったチョコレート「酒トリュフ」。チョコレートに吟醸生酒「しぼりたて」を練り込んだもので、広島市のケーキ専門店「ケー・サヴール」とのコラボレーション商品です。酒粕と酒粕を使った料理レシピ、酒蔵歩きに便利なマップも添えられて、日本酒の魅力を体感できる楽しいお土産セットです。

店内ではオシャレなグッズもそろう


「掬水」で賑やかに懇親会

懇親会会場「菊水」懇親会場は「割烹 掬水」。
日本庭園を眺めながら、季節の食材をふんだんに盛り込んだ日本料理を堪能できます。店の敷地内には「かみの井戸水」と呼ばれる亀齢酒造の仕込み水があり、料理や「和らぎ水」にもこの水が使われています。

乾杯は生にごり酒の「夢ふわり」。試飲した3種類の酒も再び登場し、社長や女将も一緒に食べて盛り上がりました。デザートに登場した酒粕のムースが大好評。口当たりが優しく、鼻腔に酒の香りが広がります。

石井社長が「本日、日本酒の伝道師が増えました。ぜひ西条の酒を広めてください」とあいさつ。名残惜しいものの、会が締めくくられました。

懇親会写真

取材後記

神聖な酒造りの現場を間近に見ながら、普段はなかなか会うことのできない杜氏さんの話を聞くこともでき、有意義な時間が過ごせました。杜氏の心意気に触れ、酒造りへの情熱を肌で感じることで、私を始め参加者の皆さんも日本酒に対する思いが変わったのではないでしょうか。日本酒がますますおいしくなりそうです。

▲PAGETOP