2015年度蔵見学会

2015年2月15日(土)

広島県酒造組合では、毎年仕込みの時期に広島県の蔵元を訪ねる「蔵見学会」を実施しています。今年は2月15日に賀茂泉酒造(東広島市)からスタートし、三宅本店(呉市)、亀齢酒造(東広島市)、賀茂鶴酒造(東広島市)、藤井酒造(竹原市)の順で5蔵で行いました。その中から、賀茂泉酒造の見学会の様子を紹介します。
賀茂泉酒造は大正元(1912)年創業。米と米こうじのみで造る純米酒の製造を戦後全国でいち早く始め、純米醸造にこだわって作られています。広島杜氏伝承の三段仕込を忠実に守りながら、厳選された米を手造りで醸し、活性炭素ろ過を行なわず、芳醇で豊かな味わいと美しい山吹色した酒が特徴で多くの人に親しまれています。
今回の見学会は女性限定で20名ほどが参加。昭和4年に建てられた素敵な洋館「酒泉館」に集合し、まずは酒造りについてのビデオを鑑賞し、杜氏さんや前垣壽男社長から酒造りについての話しや質疑応答がありました。そして最新鋭の設備を誇る酒蔵を見学。酒の試飲の後、「酒泉館」2階で懇親会が行われ、女将特製の酒の肴や西条名物「美酒鍋」などをいただき楽しい時間を過ごしました。
賀茂泉の酒造りについての話(ビデオより)
賀茂泉という酒銘は地名の「賀茂」と仕込み水に使った、蔵元所有の山林にある山陽道の名水「茗荷清水」から「賀茂泉」と名付けられました。そして戦中・戦後の混乱期に失われた日本酒本来の姿を求め、米・米麹だけで仕込む純米酒造りに取り組み、試行錯誤くり返し、昭和46年に『純米醸造 本仕込賀茂泉』を発売しました。
バランスのとれた酒造りを行うため、すべてのもろみが低温で発酵できるように、独自の温度管理システムも導入。仕込み水には西条の北部にある龍王山から蔵の井戸に湧く中硬水を使用しています。原料米は広島県産の「広島八反」「山田錦」「千本錦」などを使用し、純米酒を中心に日本酒の伝統的な手法で酒造りを行っています。
●ビデオ鑑賞の後は質疑応答タイム●
参加者からお酒の種類によってカロリーは異なるの?という質問に、「日本酒の成分の8〜9割が水です。飲み過ぎない限り、カロリーはほとんど変わりません。ちなみに全体の0.2%くらいの成分が味に変化をもたらしています」と答えていただきました。
また別の参加者から仕込み水についての質問があり、「龍王山から3系統になった伏流水が、酒蔵通りの地下にある岩盤の下まで、10〜15年くらいゆっくり時間をかけて流れ着きます。鉄分が少なく、ミネラル分を含んだ酒造りに最適な水となり、西条の酒は硬度が高めで"力強い酒"といわれています。また現在、一升につき1円の寄付を行うなど、水源となる森林保護や整備に地元酒蔵が中心となって活動しています」と社長よりお話しいただきました。
社長と酒蔵見学
軒先に蒼々とした新しい杉玉が吊るされた蔵へ。靴を履きかえてキャップを被ります。
最初に、蔵の屋上へ行き、酒蔵通りの風情や龍王山から流れる伏流水についての説明がありました。
蔵に一歩足を踏み入れた瞬間、ふわっと甘酸っぱくて良い香りが漂います。大きな精米機や麹室、ステンレスタンクが整然と並ぶ清潔感のある仕込み蔵、しぼり機など酒造りの工程に沿って、衛生面を考慮してガラス越しに見学。麹は酒の味を決める重要なところ。とくに酵母作りには手が抜けない」と社長。しぼり機の前では、出来立ての「酒粕」を味見することができました。実際の仕込み作業の様子は見ることはできませんでしたが、杜氏の仕事内容も聞くことができました。また、清潔・整頓が徹底された酒蔵内は酒造りへの強い信念が感じられました。
お楽しみの試飲タイム
見学後は試飲の時間です。
用意されたのは、長期熟成酒の「純米吟醸 永年古酒」、フレッシュでフルーティな味わいの「純米大吟醸 生酒」、淡い黄金色の爽やかなキレを持った「純米吟醸酒」、東広島市造賀地区で収穫された山田錦を100%使用した「造賀 純米酒」。さらに、紀州南高梅を純米原酒に漬け込んだ、甘さを控えめに仕上げた「純米梅酒」を合わせた5種の飲み比べをたっぷりと楽しみました。
女将特製料理で賑やかに親睦会
「酒泉館」2階へ移動し、親睦会スタート。
まずはウエルカムドリンクに「COKUN+」。こちらのお酒は、100%米由来の発酵エキスを配合した、ヨーグルトを想わせる爽やかな酸味とマイルドな甘さが特徴のお酒。
テーブルにはロゼワインのような日本酒「COKUN」や純米吟醸生酒、にごり吟醸などがスタンバイ。料理は女将が「このお酒に合わせてほしい酒の肴」が運ばれてきます。とくに、ゴルゴンゾーラに「造賀純米酒」の熱燗と純米吟醸「山吹色の酒」のぬる燗(42℃)を飲み合わせ。参加者は「濃厚なチーズに、すっきりとしたお酒がよくあう」とその意外性に驚いていました。
その他にも、オリーブオイルと塩を添えた豆腐やふろふき大根、京だしを使った湯豆腐、かす汁などが次々と運ばれ、料理と美酒に酔いしれました。また、料理上手な女将には参加者から「だしの作り方」など料理に関する質問があり、女将さんが丁寧に説明されていました。さらに、美酒鍋の実演があり、材料や調理のコツについて熱心に質問する参加者もいらっしゃいました。おいしい料理にお酒も進み、大盛況でした。
編集後記
「酒蔵見学に参加して、もっと西条の町が好きになった」「チーズと日本酒が合うことが合うなんて驚きました」「美酒鍋を自宅で作ってみたい」など、参加された方々は大満足のようでした。ぜひ、西条のお酒を広めてほしいですね。
「酒泉館」では利き酒や仕込み水でいれたコーヒーがいただけるので、 またお友だちを誘って、ほろ酔い気分で西条の酒蔵通りを巡ってみるのもいいかもしれません。