2016年度蔵見学会

2016年2月13日(土)

広島県酒造組合では、毎年仕込みの時期に広島県の蔵元を訪ねる「蔵見学会」を実施しています。今年は2月13日に三宅本店(呉 市)からスタートし、賀茂泉酒造(東広島市)、亀齢酒造(東広島市)、賀茂鶴酒造(東広島市)、藤井酒造(竹原市)の順で5つの蔵で行いました。その中から、三宅本店の見学会の様子を紹介します。
呉市の三宅本店は安政3(1856)年創業。おなじみの銘柄「千福」をはじめ、品質至上に徹した酒造りを行っています。 中国地方初の見学コース付工場の「酒工房せせらぎ」やお酒の試飲、販売などを行うアンテナショップ「ギャラリー三宅屋商店」も併設しています。
今回の見学会は男女合わせて18名が参加。まずは主に普通酒を醸造する「吾妻庫」と主に吟醸酒を醸造する「呉宝庫」を見学し、酒造りや日本酒に関する話も聞きました。続いて最新設備を備えた工場を見学。酒の試飲の後、「おうちレストランにしまき」にて懇親会が行われ、シェフの実演を見ながら、三宅本店の酒とコラボしたオリジナル料理をいただき大いに盛り上がりました。
「吾妻庫」と「呉宝庫」の酒蔵見学
営業部長兼生産部長の三宅さんのグループと生産部醸造担当の山根さんのグループに分かれて見学します。
キャップをかぶり、靴を履き替え酒蔵へ。蒸米、麹、酒母、仕込み室などを見学して回りました。説明を聞きながら蒸米や麹の試食も。糖を作る働きのある麹は噛むとじわりと甘味が広がります。酒母室や仕込み室に入ると、整然と並ぶ大きなタンクに圧倒。「仕込みは雑菌の繁殖を抑えつつ酵母の増殖を促すため、一度ではなく三段階にわけて仕込んでいきます」と、山根さんから日本酒の段仕込みのお話を聞き、酒造りの奥深さを思い知らされます。参加者らが実際に櫂棒を手にしてタンクの中をかき混ぜたところ、口々に「思ったより深い」と驚きの声があがりました。甘みの残ったもろみや昨日および今日絞ったばかりのお酒も味見して、お酒が完成するまでの味の移り変わりも実感。蒸米から日本酒が出来上がるまで、手間暇かけて造られていることを見て聞いて味わって知ることができました。
日本酒講座と工場見学
見学を終えた後は山根さんによる日本酒講座があり、改めて日本酒の製造工程を学びました。酒蔵を見学してきたばかりとあってみ
なさんうなずきながら聞いています。三宅本店では原料米の9割は広島産、仕込み水は灰ヶ峰の伏流
水を使っているとのこと。「水の硬度が高いほど活発に発酵し、辛口の酒になります。灰ヶ峰の伏流水は中軟水で広島では少し硬め
の水のため、完成したお酒は県内の中では辛めです」と特徴を説明してくださいました。また、「仕込みにお米を送る際、空気輸送ではなく水輸送をしています。これにより音が静かで、粉じんが舞い散らないなど衛生的に良くなりました」という話もあり、安心、安全の酒造りへの強い信念が感じられました。
日本酒の解説では、アルコールのカロリーはすぐ熱に変わるので脂肪になりにくいと聞いて参加者も一安心。「飲みすぎず適量でおいしく飲んでもらえればと思います。日本酒と一緒に水を飲むことをおすすめします」というありがたいアドバイスもいただきました。
続いて開発セレクションの古谷さんの案内で、瓶ラインと紙パックラインの工場を通路からガラス越しに見学しました。工場内は清浄を保つように制御されたクリーンルーム。「外側のドアと内側のドアは同時に開閉しません」「お酒をつめる時には外気が入らないように気圧をあげます」という徹底した安全管理に、みなさんも感心していました。見学通路には大正時代、軍艦に積んでいた千福の酒が赤道を二度往復してもいたまなかったという海軍からの品質証明書や数々の軍盃など、歴史ある品々が展示されています。
試飲タイム
酒造りや歴史に触れた後は、併設する「ギャラリー三宅屋商店」で、お待ちかねの試飲の時間です。店内ではお酒や関連グッズを販売しているほか、昭和レトロな雑貨も展示されています。試飲は「吟醸酒」「純米酒」「ウキウキレモン酒」「にごり酒」「純米原酒 ごくり」「純米大吟醸 無濾過生原酒」ほか多彩にそろい、参加者は飲み比べを大いに満喫しました。
懇親会「シェフが教える料理教室」
懇親会は和の食材を使い、日本人の舌に合うフレンチを提供してくれる「おうちレストランにしまき」で行われました。こちらのお店では本格的な味がお箸でカジュアルに楽しめます。オープンキッチンを備え、料理のライブ感もみどころのひとつ。定期的に開催されるお料理教室やお菓子教室も人気となっています。
この日は三宅本店の日本酒とコラボした特別料理。「シェフが教える料理教室」と題して一部のメニューを西牧シェフがオープンキッチンで調理しながら、ポイントや作り方を説明してくださいました。
「お魚としめじの日本酒蒸し クリームソース」「豚ロース肉の塩こうじ焼き マスタードとオリーブオイルのソース」など前菜、スープ、お魚、お肉、デザート2品が次々と運ばれます。日本酒とコラボすることでコクが出たり、味がまろやかになったり。思いもよらない新鮮な味との出会いにみなさんから感嘆の声が上がります。デザートの「かぼちゃと日本酒のババロア」も日本酒を加えることで、甘ったるいかぼちゃがすっきり爽やかな味に。 各メニューに合わせて出された日本酒「純米大吟醸しぼりたて」「生酒」「純米酒」「神力」はどれも料理との相性が抜群! おいしい料理と美酒に酔いしれるひとときとなりました。
本日の料理のレシピも用意されていたので、この味を再現することができそうです。
編集後記
手間暇かけた酒造りを知り、それに携わる人々の思いに触れ、お酒を使った料理も堪能。みなさん「大満足の一日でした」 と笑顔で帰宅の途につきました。日本酒の様々な魅力を知ったことで、今後はよりおいしい一杯をいただけそうです。