MENU

お知らせ詳細

2024年3月1日リポート

「2024年度蔵見学会」の模様をUPしました。

広島県酒造組合では、毎年新酒の仕込み時期に広島県の酒蔵を見学する『Osakeテラピー酒蔵見学会』を実施しています。今年は2月~4月にかけて、馬上酒造(安芸郡熊野町)、賀茂鶴酒造(東広島市)、亀齢酒造(東広島市)、賀茂泉酒造(東広島市)、西條鶴醸造(東広島市)の5つの酒蔵で行われます。Osakeテラピー酒蔵見学会では初めてとなる馬上酒造の見学会の模様をご紹介します。

安芸郡熊野町にある馬上酒造は明治26(1893)年の創業以来、熊野の豊かな自然を生かしながら、伝統的な手仕事で丁寧な酒造りを行ってきた酒蔵です。代表銘柄「大号令」はかつて地元で消費され、町外にはあまり出回らない幻の酒とも呼ばれてきました。令和3(2021)年からは滋賀県や地元広島県の酒蔵で修行してきた村上和哉さんが志願して杜氏をつとめています。純米酒を中心に、今では珍しくなった和釜や甑(こしき)、槽(ふね)などの伝統的な道具を用いて酒造りを行うとともに、生酛造り(きもとづくり)といった製法にも挑んでいます。

「釜場」から見学スタート

馬上酒造は自然に囲まれた地にあり、「大號令」という大きな看板と酒蔵ならではの蔵が目印です。見学会には男女8名が参加。中には大阪から来られた方もおり、期待が高いことがうかがえます。
酒蔵見学会は杜氏の村上さんのあいさつの後、建物の一部は創業当時のものという趣のあるたたずまいの蔵へと移動して始まります。村上さんの解説のもと、酒造りの現場を見学しながら試飲も楽しみました。

最初に案内されたのが米を洗い、蒸したりする「釜場(かまば)」。
酒造りは精米したお米を洗い、水を吸わせることから始まります。「杜氏がストップウォッチで測っているのを見たことがあるでしょう」という村上さんの問いかけに皆さんうなずきます。お米に適量の水を吸わせるため、お米の品種特性などを考え、秒単位で時間を測っているのだそう。ちなみに10㎏のお米が給水後は13㎏になるそうです。続いて馬上酒造では昔ながらの和釜から出た蒸気で木製の甑に入れたお米を蒸し上げます。「少ない水を強い火力で沸かして強い蒸気を出すというのが大事です。酒蔵ではお米を1時間蒸しますが、昔の杜氏は空焚きするぐらい蒸して釜を壊すこともあり、釜割り杜氏と言って、釜をいくつ割ったのかが勲章になったそうです」良いお酒を造ろうという杜氏たちの熱い思いに思わず引き込まれますね。

なお、馬上酒造の甑は80年前以上の物なのだとか。「木製なので断熱性がよく、結露しないので理想とする蒸米が得られます」とこだわりの理由に皆さんも納得です。

先人の足跡が残る柱も

続いて青色のタンクが並ぶ仕込み部屋へ。仕込みとは酒母に麹、蒸米、水を加えて発酵させ、日本酒の元となる「(醪)もろみ」を造る工程のこと。麹のはたらきにより米のデンプンが糖へと分解され、同時に酵母により糖分がアルコールへと変わり、醪が出来上がります。仕込みではお米や水を3回に分けて4日間かけて入れ、醪を完成させるのだそう。「タンクに巻いてある黒い帯の中に冷水が回って循環し、発酵熱を抑えています。黒い帯が巻いていないタンクは大きい容器に小さく仕込むことで、発酵熱の上昇を抑えています」と村上さん。環境を巧みに生かしながら工夫して酒造りに取り組んでいることがうかがえます。

ぜひ皆さんに見せたいと村上さんが案内してくれたのは、部屋の中に立つ柱です。そこには「昭和38年の酒造りの思い出」と題して、その時の杜氏の氏名や蔵人名などが書かれていました。村上さんは書かれていた杜氏を訪ね、「馬上の水は水質が柔らかく発酵が難しいので苦労したよ」という思い出などを話してもらったそうです。改めていろんな人たちが関わって酒造りが残されていると感じたと話されていました。

搾りたてのお酒の味は?

続いて皆さんお待ちかねの試飲です。麹造りの説明を受けた後、酒を搾る部屋へ。醪を搾ると、酒かすと日本酒に分かれます。搾りといえば、機械の「やぶた」が有名ですが、こちらでは船のような形をした伝統的な「槽(ふね)」を用いると聞いて、皆さんも興味津々です。使用している槽も50年以上前の伝統的なものだそう。槽搾りは、槽の中に袋に入れたもろみを並べ重ね、圧力を加えて搾り出す仕組みで、搾る段階によって「あらばしり」「中汲み」などと呼ばれます。この時はバランスがよく品質の良い段階とも言われる「中汲み」。その場で搾りたてのお酒を飲んだ参加者からは「クリアな味」「おいしい」と感激の声が上がります!

なお、このお酒は精米機メーカー「サタケ」が開発した「真吟(しんぎん)」という手法で精米されたお米とのこと。これはお米をあまり磨かなくても大吟醸並みの酒質を得られるというもので、吟醸のようなフルーティな香りも印象的でした。

生酛造りの酒母を試飲

最後は酒母造りの製法の一つ、生酛(きもと)造りの見学です。酒母とはアルコール発酵に必要な酵母を育てる工程。酒母は、雑菌を取りのぞくため酸性にする必要があります。現在は乳酸を入れますが、昔の生酛造りでは天然の乳酸菌を取り込み、乳酸発酵させていました。生酛造りは酒米をすりつぶす工程など手間と時間のかかる手法ですが、村上さんはこの生酛造りにも挑んでいます。「微生物のことを知らない江戸時代の人がこの製法を確立しました。それを我々が理解して後世に伝える役割があると思います」と村上さの熱い思いがあふれます。

ここでは湯たんぽのような道具を入れて酒母を温める暖気入れ(だきいれ)という作業を見学。続いてなんとアルコール発酵前の乳酸生成の段階の酒母とアルコール発酵したものをそれぞれ味見しました。アルコール発酵前の酒母は白くどろどろして米粒もあり、「薄いヨーグルトのような感じ」で、まだ酒とは感じられません。続いて発酵が進んだものを飲むと、「お酒の香りがする」「甘酸っぱい」と次々と驚きの声が! これは普通の日本酒の3倍か4倍の酸味があり、その酸っぱさが他の菌を繁殖させないのだとか。お酒へと変わる段階を味わい、皆さんのテンションも上がります。酒母を試飲するというレアな体験を楽しんでいました。

村上さんの分かりやすい解説と楽しいトークに引き込まれながら、酒蔵見学が終了。質疑応答では、現在は主に3人で酒造りをしていること、酒造りは11月から4月まで行っていることなどを回答してくださいました。

酒造りの現場に触れ、杜氏の思いを聞いた参加者は「普段はできない体験ができて楽しかった」「お酒造りがよく分かった」と酒への興味がより深まったよう。お土産の日本酒とともに、気に入った日本酒も購入されて帰路につかれていました。

編集後記

酒蔵見学では村上さんが、熊野の恵まれた環境をうまく引き出した酒を造りたいと何度もお話しされていたのが印象的でした。村上さんは今後、生酛造りよりも古い酒造りの製法にも挑戦してみたいとのこと。馬上酒造の日本酒、今後も期待したいですね。

お知らせ一覧へ

TOP