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2025年3月10日リポート
「2025年度蔵見学会」の模様をUPしました。

広島県酒造組合では、毎年新酒の仕込み時期に広島県の酒蔵を見学する『蔵見学会』を実施しています。今年は2月~3月にかけて、賀茂鶴酒造(東広島市)、西條鶴醸造(東広島市)馬上酒造(安芸郡熊野町)、亀齢酒造(東広島市)、賀茂泉酒造(東広島市)の5つの蔵で行われました。その中から、取材は6年振りとなる亀齢酒造の見学会の模様をお届けします。

今回の蔵見学には、女性限定で定員いっぱいの15名による参加がありました。
当日は営業主任の石井崇太郎氏より、酒造りに関する基礎知識、亀齢酒造のこだわりなどをお聞きしました。その後、29年間亀齢の味を見守り続けている西垣杜氏の案内で蔵を見学。最後に試飲を楽しみ、お土産を手に帰途へ着きました。
まずは日本酒にまつわるお話、
そして亀齢酒造のお酒造りについて
日本酒の起源は古く縄文時代まで遡り、「口噛みノ酒」として巫女が作業を行い、神様に捧げられる神聖な物だったのだとか。その名の通り、加熱した米を口の中でよく噛み、唾液に含まれる酵素で糖化し、野生酵母によって発酵をすすめる手法でした。
日本酒造りに欠かすことのできない工程のひとつである発酵、そのために重要なのが麹。「一麹、二麹、三麹」と言うくらい麹は酒造りにとって大切で、亀齢酒造では特に「良い酒造りのために麹造りにこだわる」姿勢を保ち続けているそうです。

また、今や、酒造りを行う蔵人を会社組織として構成している蔵が多くなっているのですが、亀齢酒造では昔ながらの出稼ぎ型で蔵人の構成を維持しています。酒造りの専門集団として10月から4月の間、酒造りに取り組んでもらう伝統的なスタイルを守り続けているそうです。昔ながらの酒造り専門集団である蔵人によって、麹にこだわり、丁寧に仕込まれた亀齢のお酒が造り出されます。興味深い日本酒と亀齢酒造の酒造りについてお話をうかがった後は、いよいよ実際の蔵を巡ります。
いよいよ蔵見学
衛生面に配慮してキャップとマスクを装着、蔵内部の温度変化を起こさないための迅速な集団行動などの注意事項を聞き、いよいよ蔵内部へスリッパに履き替えて足を踏み入れます。
蔵の入り口では、西垣杜氏が出迎えてくださり、おかみさんからは「亀齢の宝です」との紹介がありました。

まずは洗米などの作業をする場所で、お米に水を吸わせるための繊細な配慮の必要性について説明を聞きます。その後、味わいある木製の階段を上がり麹室へ。室に入った途端、杉の良い香りと熱気に包まれ、それまでとは全く異なる空間が広がっていました。温度が大切な麹室では、24時間常に適温を保つための見守りがされています。温度管理のため、麹を入れた“もろぶた”と言われる箱を入れ替えるので、西垣杜氏は夜中、2時間おきに起きて作業をするそうです。麹の出来次第でお酒の味や質が左右されるので、一瞬も気が抜けない日々が続きます。

次に訪れたのは酒母室。酵母の特性が出る場所で、お酒に近いような良い香りがしています。続いて仕込み蔵へ移動。大きなタンクがいくつも並び、中では麹がでんぷんを糖に変え、その糖を酵母が食べてアルコール発酵させ、遂にはお酒が誕生する場所です。11度に温度を保ち、ゆっくりと発酵させることで酒質が上がります。
最後は圧搾機、巨大なアコーディオン状の機械がじっくりと酒かすと酒に分けていきます。
一通りの蔵見学を終え、印象的だったのは、「日本酒造りは、細かい手作業の積み重ねで、2時間おきの作業が欠かせないなど、仕込み時期はゆっくり眠ることもできません。それでも良いお酒が出来た瞬間、その苦労が報われるのです。私たち蔵人は、良いお酒を造りたい、その一心で日々の作業を丁寧に積み重ねています。」という西垣杜氏のお話でした。皆さん、西垣杜氏の言葉にしっかり耳を傾けていました。酒造りの現場を実際に見学し、杜氏さんの熱のこもった言葉を聞き、これからは、お酒の味わいがさらに深まるのではないでしょうか。

お楽しみの利き酒タイム
蔵見学から戻り、次はお楽しみの試飲です。
まずは、亀齢酒造を代表するお酒三種の利き酒から。蔵元限定酒 吉田屋の酒、純米大吟醸 亀香(きっこう)、純米酒 寒仕込(かんじこみ)の三種それぞれの銘柄は伏せて飲み比べ、番号だけで好みのお酒を選びます。参加者の皆さん、それぞれに好みは分かれましたが、どれも美味しい、と満足そうな表情です。

会の締めはこの季節だけのお酒“夢ふわり”で乾杯です。発泡性の日本酒なので、開け方に気を付けるようおかみさんからアドバイスをいただき、グラスに酌み交わします。グラスに注ぐと、優しいピンク色と豊かな香りで一気に華やいだ雰囲気になりました。この冬の冷え込みのおかげで、鮮やかなピンク色になっているのだとか。もう少しで訪れる桃の節句にもぴったりな“夢ふわり”で「カンパイ!!」蔵見学を締めくくりました。

編集後記
2月終盤にも関わらず最強寒波襲来ということで、厳しい冷え込みの中での蔵見学でしたが、造り手の熱い思いと参加者の日本酒愛で熱気に包まれた時間となりました。
「初めての参加だけど、とても楽しかった」という方、「日本酒造りに興味があったので」という方、「亀齢さんのファンで3度目の参加です」という方、皆さん思い思いに楽しい時間を過ごされた様子でした。
名残りを惜しみつつ、お土産の“夢ふわり”を手に帰途へ着きました。
